車から外の風景を見ていると、
急に開けたように村が見えてくる。
助手席に座っていた渚も目が覚めたのか
背筋を伸ばす。
車はある瓦屋根の一軒家の前に止まると、
渚が車から飛び出る。
私も車から降りて外の風景を一望すると、
タイムスリップしてきたような感覚に陥る。
地面は砂利道で、沖縄のそれとは少し違い、
観光化されている訳でもなく、
森に囲まれた秘境の村にきた気分になった。
木々や自然の濃厚な香りが鼻をつき、
自然に酔ってしまいそう。
一体こんなところで人々はどうやって暮らしているのか。
畑とかあるから食には困らなそうだけど、
お金はどうやって稼いでいるのか。
私は不思議に思いながら立っていると、
渚に抱きつかれる。
「遥先輩~びっくりしたでしょ~
こんなド田舎で~」
「うん、ちょっとびっくりしてるかも」
「うふふ、でもねーここで取れる野菜とかってー
都会じゃ高く売れるて結構お金持ちの村なんですよー」
「そうなの?」
「そうですよぉ、一流料亭とかが買い取ってて。
何か土壌が特別で美味しい野菜が出来るんですって」
確かにこの村全体を覆う、森の中に迷いこんだような自然の匂いは
土壌にも影響があるだろうと納得する。
「先輩~家の中に入りますよー」
車から自分の荷物を出そうとすると、
既に高雄が家の中に運んでいてくれる。
「ありがとうございます。」
「いえいえ、それではちょっと仕事に戻りますので、
失礼します」
高雄は車に乗り込んで、行ってしまった。
「素敵なお兄ちゃんね」
「えへへへ、そうでしょうー。
遥先輩がお兄ちゃんと結婚してくれたら
私のおねえちゃんになるんだねー」
「もう一体何いってるのよ。
今日あったばっかりでしょー」
「えへへへっへ」
そして、「お邪魔します」と渚の家の
玄関をくぐると、品のある熟年の女性が出迎えてくれる。
「わざわざ遠いところまで来ていただいて。
渚がいつもお世話になっております。」
「こちらこそ、お世話になります」
家の中を案内され、居間に通され、
畳の上に座ると、お茶が出される。
お茶を一口飲むと今まで味わった事のない、
爽やかながら、茶葉の匂い立つ素晴らしい風味がある。
「美味しいぃ」
「でしょー、この村にいる時には気づかなっかけど、
大学で一人暮らししはじめて、うちの村のお茶
美味しいだぁって気づいたんだよ」
渚とくつろいんだ雰囲気で話していると、
渚の母が来て、頭を下げられる。
「今晩のお祭りに参加して頂いてありがとうございます。」
私は村の祭りに参加するだけなのに、
この仰々しい態度に驚いてしまう。
「いえいえ、えっとどんなお祭りか
渚さんに聞いてないんですけど、
一体どんなお祭りなんですか」
母はハっとした顔つきで私を見つめ、
それから険しい顔で渚を見つめる。
「先輩をびっくりさせたいから
秘密だよー。お祭りになったらわかるからー
それまでの楽しみだよー」
渚は母の険しい顔を無視するように
無邪気に遮ってしまう。
「ねー遥先輩~ちょっと村を歩きましょう~」
まるで母から逃れるように、
急に立ち上がり、外に引っ張り出されてしまう。
「渚、あんた何を隠しているのよ」
明らかに渚の態度がおかしい。
「何も隠してまんせよ。
ただ先輩に楽しんでもらいたいから・・・」
それにしてもあのお母さんの顔は
自分の娘に対して非難する目をしていた。
「でもあんたのお母さんびっくりしてたじゃん。
私が内容も知らずに参加するって聞いて」
「お母さんはいつもああいう顔してるんですよ。」
そんな訳はないと思いながら、
村の中を歩いていると、
森林浴をしているような匂いが強すぎて、
いまいち頭がまわらない。
「ねーここ自然の匂いが強すぎない?」
「あー、これですか?これは今日のお祭りの為に、
村全体で香を焚いているんですよ。」
「香?」
「そうです。お祭りの三日前から
特別な香を焚いて、村に充満させているんです」
これが香の匂い?
まるで自然を抽出したようなこの濃厚な匂いが
香で出せるものなのかと、不思議に思いながらも
完全にこの匂いに酔ってしまう。
「ねーちょっと匂いに酔ってフラフラするんだけど」
「あー、ごめんなさい。
そうでよね、慣れてないと、酔ってしまうかもしれない。
気持ち悪いですか?」
「う~ん、気持ち悪くないけど、
何かフラフラして立っていられないの」
「遥先輩、ちょっと頑張って、
やっぱ家に戻って休みましょう」
「うん」
体に力が入らなくなり、
渚に抱きかかえるように、
家につくとそのまま倒れこむように、
眠ってしまう。
何時間寝たのだろう。
遠くで太鼓の音がして目が覚める。
隣で渚がベッドに寝転がりながら本を読んでいる。
どうやら渚の部屋に運ばれて
寝てしまったらしい。
私は起き上がると、また頭がフラフラする。
「先輩、大丈夫?
そろそろお祭りはじまりますよ」
渚の部屋の窓を見ると、既に夜になっていて、
真っ暗になっている。
「私・・いけそうにないかも・・
まだフラフラするよ」
「遥先輩、お兄ちゃんにお祭りまで
車で運んでもらいますから、
行きましょうよ」
泥酔状態のように、
頭が回らず、曖昧に答えて、
またベッドに横になる。
そうしていると部屋の扉が開かれ、
高雄が顔を出す。
「さぁ皆でお祭りにいきましょうかあああ」
気のせいなのか。
フラフラになりながらも、
お昼にみた高雄とは雰囲気が違い、
ギラギラしているよう感じ、
少し嫌悪感を感じる。
続く
テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト