物語は大概何気なに出来事から始まる。
その晩もそうだった。
偶然駅の改札口で大学時代の友人に会い、
話しているといつも乗って帰る電車に一本遅れた。
私はフォームで電車を待っていると、
一羽の鳩が飛んできた。
こんな夜に鳩を見かけるのは珍しいなぁと
見つめていると、こちらに首を振りながら
歩いて行く。
別段鳩は嫌いではないが、
自分の足元まで近ついてこられると体が固まって
緊張してしまう。
あっちへ行けと、軽く足を振り上げると
ようやく鳩はどこかに飛んでいった。
人に慣れた鳩なのか
すぐに闇夜にまぎれ見えなくる。
そしてようやく電車が来て乗り込むと、
いつもは混雑した車内もガラガラで
乗客がほとんど乗っていない。
一本送らせただけで、こんなに違うものなのか。
ちょっと得した気分になり、
これからわざと一本電車も遅らせるのも
悪くない。
私は空いている席に座る。
人によってはドアの近くの角の席が好きな人もいるが、
私は中央より少し外ずれた位置に座るのを好む。
シートに座るとボーっと車内を見回す。
どうやらこの車両には仕事帰りのOL二人しか乗っていないようだ。
何気なしに対面のシートの端に座っている女性を見つめていると、
目が合ってしまう。
私はすぐさま視線をそらすようにネオン煌く窓の風景を見つめる。
「こんばんわ」
声の方にチラっと見ると、
先ほどの目が会った女性がこちらを見つめている。
「こんばんわ」
私は周囲を見渡すも、
他には遠くの座席に座っている女性しかいない。
どうやら私に声をかけてきたようだ。
「こ、こんばんわ」
妙に胸騒ぎをして声が裏返ってしまう。
その女性は立ち上がり、春用なのか、
淡いピンクの薄手のコートをゆらゆらと揺らしながら
やってきて私と向かい合うように席に座る。
そしてその女性は熱くなったのか、
コートのボタンを外し、前がはだけると、
コートの下には何も身につけていない。
私は興奮よりも先に恐怖を感じる。
ガラガラの夜の電車で前に座る女性が
裸を見せつけてくる。
AVの企画物ならアリだろうが、
実際に目の当たりにすると少しも興奮しない。
目のやり場に困った私は、
俯いてしまう。
「駄目ですよ。駄目。
下向いても駄目ですよ」
いつの間にか来たのだろう
私の横に来ているではないか。
私は反射的に立ち上がろうとすると
すぐさま腕を掴まれる。
続く
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