「ねーねーAVとか興味ない?」
七海は見るからに水商売といった格好の男に話しかけられた。
何で私みたいな地味な女子じゃなくて、
もっとケバい女に声かければいいのに。
七海は無視して歩き続けるもホストみたいに黒いスーツを着た男が
まとわりついてくる。
「ねーねーちょっと立ち止まってよ。
話を聞くだけでいいからさぁ。」
「AVなんて出る気ありませんよ。」
あまりのもしつこいので、つい口を聞いてしまう。
「ようやく話してくれた」
男は嬉しそうにまた話しかけてくる。
「わかった。じゃあナンパにする。
大学生?ナンパしてもいい?」
七海は思わず吹き出してしまう。
「そんなナンパの仕方あるんですか?
誰もついてきませんよ。」
立ち止まり、スカウトマンを初めてじっくり見つめると
なかなかの好青年。
服装とか髪型はチャラいが、何故か妙な品がある。
あれ?タニスの王子様の彦摩呂に似ている。
「ん?どうしたの?そんなにじっと見つめて。
もしかして惚れちゃった?」
「ち・・違いますよ」
見れば見る程彦摩呂様にそっくりだわ・・
七海はつい顔を赤らめてしまう。
「よし!じゃあちょっとカフェでも入って
お話しない?もちろんスカウトじゃなくて
普通の恋人同士みたいに」
男は七海の腕を掴んで、
目の前にあるカフェに行こうと誘ってくる。
彦摩呂様に腕を掴まれて・・・
カフェに行こうと誘われる・・
だめ!しっかりしないと、
彼は彦摩呂様じゃないわ。
単なるアダルトビデオのスカウトマンよ。
しっかりしなさい!
七海は身を引き締めるも
男の顔を見つめるとつい頷いてしまう。
男は嬉しそうに七海を引っ張りカフェの中に入り、
奥の席へと入っていく。
「どうぞ」
椅子を引いてくれて、紳士的にエスコートしてくれる。
「さて、俺の名前は清彦。
お姉さんは名前何て言うの?」
清彦!彦の字を受け継ぐものだわ。
すっかり七海は有頂天になってしまう。
「ねー聞いてる?
よかったら名前教えてくれると嬉しいなぁ。」
「七海です」
つい本名を語ってしまう。
「可愛い名前だねー」
「名前だけですよ。私何て喪女ですし、アニオタですし・・」
「喪女?」
清彦は不思議そうに聞きなおす。
そうよ、彦を受け継ぐ男性が喪女などという
単語を知っているはずないわ。
「い・・いえ、それは忘れてください」
「ふ~ん、まぁいいや。
七海ちゃんアニメ好きなんだー。
どんなアニメ好きなの?」
「知らないと思いますが、タニスの王子様です。」
「あーそれすげえ有名じゃん。
週刊ニャンプで連載しているタニス漫画じゃん」
「知ってるんですか?」
七海は顔を輝かせる。
「知ってるよ、アニメは見た事ないけど、
ニャンプ買ってるからねー。読んでるよ。」
「じゃあ彦摩呂様の事も?」
「もちろん、あー俺たまに彦摩呂に似てるって言われるんだよねー。
どう?七海ちゃんから見て似てると思う?」
身を乗り出してくるので、
つい目を反らして否定しまう。
「そうかー。似てないかー。
ちょっと残念」
清彦はわざと落ち込んだ演技をして
うなだれる。
「ちょっとだけ似てますよ・・」
「本当!嬉しいぃなー」
清彦はそっと七海の手を握る。
「七海ちゃんすぐ顔が赤くなって可愛いねー」
「可愛くないですよ。
それに何で私なんか地味な女子に声をかけたんですか?
もっと綺麗な子や美人いるじゃないですか。」
「あー俺?嫌いなんだよねー派手な女って。
疲れるじゃん。
それに七海ちゃんは地味というか清楚って雰囲気だよ。」
「そ・・そんな事ありませんよ。
ただ地味なだけですよ」
「七海ちゃんもっと自身もてる容姿してるよ」
清彦の握る手が強くなる。
あぁー暖かいなりー。
彦摩呂様のお手々暖かいナリー
ついついうっとりしていると、
店員がグラスにピンク色の液体をした飲み物を運んでくる。
あれ?そういえば何も頼んでないのに、
不思議だなぁ。
「あー、ここ俺の友達のカフェでさぁ、
サービスしてくれたんだよ。
飲んで皆よ美味しいよ」
彦摩呂様に言われたら飲むしかない。
恐る恐る口にグラスを近づけ、
舐めるように飲むと、
甘い柑橘系の味が口の中に広がってくる。
「美味しいいぃ」
「でしょうー。
でもそれお酒も入ってから
気を付けてね」
「えーお酒入ってんですか?」
「そうだよ。悪い男はお酒と言わずに女性に
飲ませて酔わしちゃうんだから。」
「これだと、たくさん飲んじゃいそうですねー」
「でしょうー。俺はそういう事はしないからね。
ちゃんとお酒って言うし」
「はい」
彦摩呂様の彦の名を継ぐものに
悪い人はいないわね。
七海はつい気を許してしまう。
続く
官能小説ワード : アダルトスカウトアニオタ喪女