母と食事を一緒にとる。
元々無口な母だったが、
父が他界し、お店に客が来なくなると、
さらに塞ぎ込むように無口になっていった。
今晩も食卓を囲んで一緒に夕飯を食べるも、
ほとんど会話らしい会話も無く、
淡々とお互い食事をする。
毎日憂鬱な時間であったが、
久しぶりにお客が来て、
また来てくれるというので、
私は久しぶりに楽しい気分で食事が出来た。
しかし、この事を母に告げるのは躊躇してしまう。
母を喜ばせられるかもしれない。
でも何故か言う気になれない。
まだ店に来ただけで、
実際に購入してもらった訳ではない。
私は一人そんな言い訳で自分を
納得させ、結局母には今日の事を告げなかった。
私は食事を終えると、
さっさとお風呂に入り、
自室に引きこもる。
だからと言って何をする訳でもなく、
テレビをつけ、眠くなるまでの時間を
だらだらと過ごすのが日課になっていた。
今日も時計が22時をまわり過ぎた頃に、
そろそろ眠くなる頃合だと、
テレビと電気を消し、布団の中に
潜り込んで寝に入る。
しかし、目を瞑る度に、
今日来た女性の顔が思い浮かび、
なかなか眠くならない。
何とか寝ようと必死に自己暗示かけるも
当然ながら逆効果で一層目が覚めてしまう。
これは眠れないと、
一旦起き上がる。
普段なら寝ている時間に一体何をすれば
良いのかと手持ち無沙汰になってしまう。
しょうがないので私は自室から出て、
隣の部屋の母を起こさぬように、
忍び足で台所に行き、
水道水をコップに注ぐ一杯飲む。
さて、どうしようかと考えると、
今日来た女性の寝転んだ布団を見に行こうと
思いつく。
その時別段やましい気持ちがあった訳ではなく、
ただ純粋に見たかったのです。
階下に降り、真っ暗な店内を
明かりもつけずに、ベッドの側へ行くと、
鼓動が早くなってきます。
これがあの女性が寝ていたベッドに布団かと
自然と手の伸ばし、布団の匂いを嗅いでしまいました。
布団から女性の匂いと、
なんでしょうか、化粧か香水かわかりませんか
とっても甘い匂いがしたのです。
その瞬間、私は恥ずがしながら勃起してしました。
甘い匂いに夢中になり、
女性が今日寝ていた場所に潜り込み、
必死に布団に付いた匂いを嗅ぎながら、
パンツを下ろし、
手は勃起したペニスを持ってシゴいていたのです。
目を閉じ、鼻から匂いを感じると、
朧げだった女性の表情もイキイキとしてきて、
ペニスを握った手がどんどん早くなっていくのです。
この布団が商品だという事も忘れ、
まるで女性に優しく抱きしめられいるような心持ちで、
私はそのまま射精して、
布団にぶっかけてしまいました。
まさに至福の一時でしたが、
すぐさま激しい自己嫌悪にかられたのです。
中年になって用意をもせず、
その場の勢いでオナニーをしてしまい、
あろうことか布団にぶっかけて
商品を駄目にしてしまったのですから当然の事です。
何とかせねばと、
私はすぐさま起き上がり、
店の奥からティッシュを持ってきて
拭き取りましたが、もう売り物にはなりません。
このまま外にほっぽり投げ出す訳にもいかず、
ひとまず布団を畳み、隅の方に置くことにしました。
そしてその精子のついた布団を見ると、
本当に申し訳ない気持ちでいっぱになり、
涙がこぼれ落ちそうになりました。
布団屋がこんな事に布団を使っちゃならん。
そんなんじゃ良い布団屋にはなれないぞと、
親父の声が聞こえてくるのです。
私はもうこんな事はしない、
これからは良い布団屋になろうと
かたく決心し、自室に戻ったのです。
久しぶりの放出で疲れたのでしょう、
先程のが嘘のように私はすぐ眠りにつきました。
次の日、私はいつもより早く、
そして気分良く目が覚めました。
朝食を母と食べ、そしていつにもまして
軽やかな足取りで階下のお店に降り、
シャッターを開け、店を開けました。
今日もあの女性くるかなと、
胸を躍らせる自分に、
まるで恋をした中学生のようだと
自嘲気味な笑いが溢れます。
いつもなら、椅子に座り、
ボーと外を眺めているだけで
時間は過ぎますが、
今日はつい時計が気になってしまい、
チラチラと見る度に疲れがたまってくるのです。
今日は来ないかもしれない。
そう思うと気持ちはふさぎ込み。
いや一時間以内に来るかもしれない。
そう思うとそわそわと落ち着かなくなってしまい、
その繰り返しでお昼すぎにはヘトヘトに疲れてしまいました。
もう何だが馬鹿らしくなり、
ちょっと椅子に座りながら眠りに就こうかと
腕を組み、頭を下げて寝る姿勢になると、
立て付けの悪い扉を開ける音がした。
「あの~今日もお布団を見せてください。」
私は飛び起き、女性の元に駆けつけました。
続く
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