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大学につくと既に授業が始まっていた。
途中から入るにも気が引け
ケンジは廊下のある椅子に座り、
コンビニ買ってきたおにぎりを食べ始める。
いつもの習慣で大学に来たが
今は授業なんか受ける気になれない
落ち込んだまま、むしゃむしゃと
おにぎりをほおばっていると、
向かい側の端の椅子に座り、
本を呼んでいる地味な女の子がいる。
全然気付かなかった・・・
影が薄い女の子だなぁと
見るとはなしに見ていると
クスクス笑いながら本に夢中になっている。
いい気なもんだ・・・
一体全体何がそんなに面白いんだよ・・・
睨みつけるように見るとハッとする。
地味だと思っていた女の子
よく見ると、可愛い顔立ちをし、
本当に楽しそうに本を呼んでいる。
その楽しそうな、そして幸せそうな
笑顔に吸い寄せられるように
目が離せなくなってしまう。
あの幸せな笑顔を見ているだけで、
鬱屈とした感情は消え去り、
そして、胸が高鳴り、
鼓動が早くなってくる。
あれ・・・なんだこれ・・・
恋?
一目惚れ?
胸の高鳴りを抑えられない。
この女の子と仲良くなりたい。
とにかく話してみたい
そんな気持ちが強くなり、
立ち上がろうとするも躊躇してしまう。
どうすればいいんだ?
今までどうしてたんだっけ?
今まで付き合っていたきた彼女との
出会いを必死に思い出す。
そうか、いつも女性の方から
アプローチしてくれたから、
自分から声をかけたこと一度もない・・・
その事実に愕然としてしまう。
今まで自分から仲良くなりたいと
思った女性がいただろうか?
必死に思い出そうとするも
誰も思い浮かばない。
そうか・・・今俺は
初めて、自分から女性を口説こうとしているのか・・
廊下はひんやりとした空気に包まれているが、
ケンジは薄らと汗ばんでくる。
拒絶された時の事を考えると
逃げ出したくなるが、
でもこのチャンスを逃したら
一生後悔する事だけは、
わかっている。
ケンジは顔を真っ赤にし、
ゆっくりと女の子の方に歩いて行く。
「あっあの・・・」
「はい?」
女の子は、楽しそうにクスクスと笑ったまま、
上目使いで見つめてくる。
ドキューーン
目が会った瞬間雷に打たれような衝撃。
ケンジは体が固まってしまう。
「大丈夫?」
「はっはい!
あっあの、何の本を呼んでいるん
でっですか?」
「これ?天才木村メディカルレッスンだよ
たぶん知らないと思うけど」
「そっそうなんですか」
「うん」
まるで童貞男のように緊張してしまい、
のぼせ上がったように、
立ち尽くす。
この後・・
この後、何を言えばいいんだ?
どうする?
どうすればいいんだ?
汗が全身から
吹き出てくるのがわかる。
「ケンジ君だよね?」
「はっはぃいいい
そうですうう」
「何か友達が噂してたから
知ってるよ」
「ありがとうございますうう」
天にも上る気持ちで浮かれてしまうが、
どんな噂が気になってくる。
「そっその友達は
どんな噂してたんですか?」
「え?ん~とねー超カッコイイって
言ってたよー」
しかし目の前の女の子は
まるでそんな事には興味なさそで
ケンジは不安になってくる。
この子は俺の事どう思っているのだろうか・・・
「そっそうですか」
「うん!」
なんだろうこの女の子
不思議な生き物を見ている気持ちなってくる。
今までこんな女性と
出会った事あっただろうか
飾り気のない、シンプルな雰囲気で、
幸せそうな笑みを浮かべ見つめてくる。
あぁ・・・大好きだ・・
本当に惚れてしまった・・・
「好きです・・・」
「え?」
「え?」
ケンジは、耳まで紅潮させる。
心の声が漏れてしまった・・・
あぁ・・いきなり告白してしまった・・
でももうとまらない・・・
「あの・・・一目惚れしてしまったんです・・
すいません・・・」
本当にすまなそうな表情を浮かべ、
うなだれてしまう。
クスクスクス
チラっと顔をあげると、
楽しそうに笑っている。
「あの・・・」
「ん?」
首を傾げ、少し考えことでもしているように
見上げてくる顔にまた
ドキューーーン
「付き合ってください!」
「ケンジ君、だってまだ
私の名前も知らないよね。」
と本を呼んでいた時と同じように
クスクスと笑い出す。
「そっっそうですね。
あの、名前を教えてください!!」
「アキ」
「アキ」
「うん、アキ」
「すっ素敵な名前です。
はい!素敵な名前です!」
こらえきれなくなったのか、
アキはウフフフフと
本当に楽しそうに笑い出す。
「ケンジ君って面白いね」
「じゃあ付き合ってくれますか!!」
「でも私、ケンジ君の事何も知らないし、
ケンジ君も私の事全然知らないよ?」
まるで子供をあやすように言ってくる。
「じゃあ教えてください!」
「どうやって?」
「そっそうですねええ
えっとえっとーデートしてくださいぃい」
「でも私、次授業だよ」
「そっそうですよね・・・
すいません。
じゃぁじゃああ授業終わってから、
この建物の玄関の前で待っています!!!」
「う~ん」
アキは少し困った顔する。
ケンジは断られるのが怖くなり、
「待っていますから!」
と言って逃げるように走っていく。
ハァハァハァ
今、俺に一体何が起きたんだ・・・
中庭に出て、息を整えようとするも
アキの事を思い出すと心拍数があがってくる。
どうしよう・・・
どうすりゃいいんだ!
とにかくこのまま会っても
暴走して絶対失敗しそう・・・
そうだ、俺も授業に出よう
とにかく落ち着かなければ・・・
ケンジは、一心不乱に
奥の建物に教室に向かっていく。
部屋に入り、席につくも
一体何を話そう
どうすれば、俺と付き合ってくれるのか・・・
必死に考えていると、
いつの間にか教授が前にいて、
授業がはじまっている。
続く