玄関が開く音がした。
友蔵は立ち上がり、息子の嫁を玄関まで迎えにいく。
「真佐美さんお帰りなさい。
泰之はどうだった?」
「先生がおっしゃるには、今のところ薬でちらそうか、
手術で切っちゃうか迷っているそうです。」
「そうか、まぁ盲腸だし、そんなに深刻になる事はないな。」
「そうですね、お義父さん」
息子夫婦と同居し始めて3年が経つ。
妻の安江は去年ガンで亡くなってしまい、
当初は真佐美に気を遣うからと友蔵は反対していたが、
妻に死なれると、同居しておいて良かったと思う。
友蔵は同居しはじめてから、
よく家事をするようになった。
「あら、お義父さんお風呂掃除と洗濯物してくださったのね。
ありがとござます。」
「いやいや、どうせ暇な身ですから、
何かしとかないと落ち着かないので」
「うふふふふ、
仕事人間でしたもんねぇ」
「確かにねぇー、現役の時は一切家の事をしなくて、
妻には悪い事したなぁって思いますよ」
友蔵はリビングの椅子に腰をかけ、
お茶をすする。
「うふふ、天国のお母さんが聞いて喜んでいますよ」
「だといいがねぇ。
あいつは結構気が強いところがあるから、
気づくのが遅いのよ!って言ってるかもしれん」
真佐美も自分のお茶を持って、
向かい合うように座る。
友蔵は真佐美と見つめ合うと
気恥ずかしくて、目をそらしてしまう。
真佐美はそろそろ三十路も過ぎて、
良い具合に脂肪が体につき
以前よりも色気が出てきた。
還暦を過ぎても息子の嫁の真佐美の色香に
反応してまう自分を恥じながらも、
それを気取られないように会話する。
「そろそろ夏も終わりだねぇー」
「そうですねー」
「泰之もせっかく休暇が取れたというのに、
盲腸になってついてないなぁ。
あいつは子供の時から、遠足とかクリスマスには
毎回風邪をひいたり、熱を出してたよ」
真佐美はおかしそうに口を抑えて笑う。
ぽっちゃりとした頬には小さくえくぼが出来る。
「旅行もキャンセルになっちゃったし、
真佐美さんすまんのぉ」
「いえいえ、いいですよ。
その分家でゆっくりしますし。」
友蔵は会話も一段落したかなと、
腰をあげ、自室で読みかけの本を読んでくると
席を立つ。
部屋に入り、一人掛けのソファに座り、
本を手に取る。
しかしいざ読み出そうとすると、
読書に集中出来ない。
汗をかき、ノースリーブ姿の真佐美の事が
思い浮かんできてしまう。
自分の妻と全く違って可愛らしい嫁だなぁ。
泰之のやつ、よくあんな素敵な女性と結婚できたもんだ。
息子を少し羨ましく思う。
そして、さて本の続きを読もうと手にするも
やはり物語が頭に入ってこない。
やれやれと立ち上がり、
トイレにでも行くかと戸を開け廊下に出ると、
下着姿の真佐美が立っていた。
「あ、すいません、汗流そうと思って、
シャワーを浴びようとしたら、下着忘れちゃって・・
恥ずかしいわぁ」
真佐美は奥の息子夫婦の部屋へと小走りで行く。
真佐美の豊満なボディと黒い下着が目にやきつく。
呆然と立っている、奥の部屋の扉を開き、
真佐美が顔だけ出してくる。
「すいませんお義父さん、
ちょっとシャワー浴びてくるので、
そのぉ・・」
「あ、すまんすまん。トイレに行こうとおもってな」
友蔵はトイレに入ると、
廊下を軽やかに歩く音が聞こえる。
トイレに入ったものの、尿意も収まってしまい、
何もせず、また自分の部屋へと戻っていく。
あの体を毎晩泰之は抱いていたのかぁ・・・
羨ましい・・・
思わず息子に嫉妬を覚えてしまった自分にビックリする。
ふむ、こりゃ精神衛生上良くない、
ちょっと外の空気でも吸ってくるかな。
友蔵はリビングに「散歩に行ってきます」と
置き手紙をして、外に出る。
8月もあと数日で終わっていますが、
やはり日中は暑い。
数分歩いただけで、汗が吹きでてしまう。
友蔵は暑さから逃れるように、
頻繁に通っている書店の中に入っていく。
汗がひくまで、店内を歩いてまわり、
ようやく少し落ち着いたかなと、
目の前の雑誌に目をやると旅行雑誌が並べられている。
旅行は今更一人でしてもしょうがないしなぁと横を見ると、
30代ぐらの女性が水着姿になっているゴシップ雑誌が目に入ってくる。
いつもなら気にも止めた事ないが、
その女性がどことなく真佐美に似ているので、
思わず手にとってしまう。
中を開くと聞いた事もない真佐美似の女優が
おっぱいを出し、裸になったグラビアページが現れる。
友蔵はヌード写真にクギ付けになってしまう。
久しぶりに女性の裸を見て、
最後にセックスをしたのがいつだったのか思い出そうとするか
思い出せなく、淋しい気持ちになってしまう。
もう男としての人生は終わったんだなと
この時始めて実感した。
友蔵は何だか何もかもや嫌になり、
書店を出て、家に帰っていった。
続く
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