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「お婆ちゃん落ち着いてよ・・
僕は歳三さんじゃないよおお」
「もう歳三さんったら、
相変わらず冗談が好きね!」
お婆ちゃんに満面の笑みを浮かべ、
僕の手を握りしめ
そして、自分の口元にもっていき
ブチュっとキスしてくるんだ
「お婆ちゃんやめてよ!!!!」
僕がちょっと怒ったように
大きな声を出すと
「もう、歳三さんの意気地なし!」
ってお婆ちゃんもプイっと怒って
また部屋の中に戻っていってしまう
僕の手にはお婆ちゃんの赤い口紅がついていて・・・
僕はそれをすぐさまホースに近づけ
洗い流す
何で、僕の事だけ思い出さないんだよ
僕は蛇口を締め、
今の出来事をお母さんに言おうとしたけど・・・
お婆ちゃんにキスされたって
言いづらい・・・
どうすればいんだよ・・・
僕は途方に暮れ、少しだけ水が溜まった池に
足を投げ出す
大好きだったお婆ちゃんが
あんなになっちゃうなんて・・・
気分は落ち込み、
悲しい気持ちになってしまう
年を取るって悲しい事なの?
そんな事を考えていると
家の中から笑い声が聞こえてくるんだ
一体何があったんだ?
池から出て、家の中に入ると
台所でお婆ちゃんと母と叔母が
楽しそうに料理を作ってるんだ
遠くから見るととっても幸せな光景で
僕は台所の入り口のところで見ていると
お婆ちゃんがふりむき
「まぁ歳三さああああん
今晩はご馳走にするから、楽しみにまっててねええ」
って嬉しそうに言うんだ
さっき怒った事なんてもう忘れたように
僕はまた歳三さんに間違われてしまった事で
うんざりしていると
母が、
「お婆ちゃんの為に我慢してね
お願い」
と言うように見つめてくるんだ
はぁ・・・しょうがない・・
僕はわかったと頷き、
居間に行き、座布団を枕にして眠りについたんだ
長旅の疲れもあり、あっという間に
ぐっすりと眠ってしまった
そして数時間が
経ったのだろうか
遠くの方でセミの鳴き声が聞こえてきて
唇から柔らかい感触が伝わってくる
な・・なんだ・・・
僕は薄っすらと目を開けると
目の前には皺々のお婆ちゃんの顔
そう、お婆ちゃんが僕にキスしているんだ
僕は一瞬で目が覚め、跳ね起きる
「うふふふ、歳三さんご飯が出来ましたよ!」
お婆ちゃんはそう言うと、僕の腕を掴み、
腕を組むようにして、一緒に食卓の方に歩いていった
一体なんなんだこれは・・
僕は混乱しながら、歩いて行くと
皆が僕の顔を見て笑い出すんだ
「え?なに?どうしたんだよおお?」
僕はイラツキながら言うと
父が
「口紅が突いてるぞ!」
って言うんだ
あっ、さっきのキスだ
僕はすぐさま洗面所にかけこみ
水で洗い流した
もう勘弁してくれよ・・・
僕は寝起きから気が滅入ってしまう
あぁいやだ、もういやだ・・
僕はうんざりながら、戻り、
どこに座ればよいんだ?って見渡すと
お婆ちゃんが空いた椅子をポンポンと叩き
「歳三さんはここよ!」
って僕を呼んでいるんだ
こんなのどうすりゃいいんだよ
断って変な空気になって
両親が悲しむ顔を見るのは嫌だし・・
僕は嫌々ながら、席に座ると
「ほら、歳三さんが大好きな
穴子のお寿司だよ~」
ってお皿にとってくれるんだ
そんなお婆ちゃんの姿が微笑まいのか
叔母や両親達は楽しそうに笑うんだよ
そりゃ僕だって、違う立場なら
笑ったかもしれないよ
でも実際、自分がその立場になったら
ちっとも、ほんのちっとも面白くない!!!
全然おもしろくないんだ
食事中も、なんやかんやで
お婆ちゃんはまるで大好きな恋人に接するように
僕の世話をして、大人たちはその光景を肴にして
楽しそうにお酒を飲んでいる
叔母さんなんか
「うふふふ、モテモテね!」
って上機嫌でからかってくるし
僕は心底ウンザリした
続く