例えば今、僕が君に声を掛けなかったら
一生僕らは出会わないかいもしれない。
だから僕は街中を一人颯爽と歩いている君に声を掛けるのさ。
「ヘーイ、彼女~僕とお茶しなさ~い」
君は僕を虫ケラを見るような目でチラっと見て、
そのまま歩いていってしまう。
どうやら現世では、僕らの出会いはここまでらしい。
致し方ない、そういう相手だっているさ。
全ての人と仲良く出来る訳じゃない。
これが僕が小学校の時に学んだ事だ。
ポイントは仲良くなれなくても、
相手を嫌う必要は無い。
それはあくまで、相性の問題なのさ。
過ぎ去った君とはどうやら相性が良くなかったらしい。
でも君と出会えたひと時に感謝。
さてさて、お次の麗しの君はどこにいるのかな。
今日は休日だけあって、町が人で溢れている。
こういう日は逆に路地裏を歩いているマニアック系女子を狙うのが一番だな。
トオルは路地裏に入り、彷徨っていると一人の女性が
周囲を見回し、道に迷ったかのようにウロウロしている。
ビンゴ!やっぱ路地裏だな。
「ヘーイ、彼女~どうしたの~僕とお茶するか~い」
「あの~この辺に金鳳花って中華料理店ないですか?」
「なつかしの金鳳花、残念ながら潰れたよ」
「潰れちゃったんですかぁ?」
「僕もよく通ってたいたんだけど、親父さんが亡くなって
店を畳んだんだ。
潰れたって言い方はフェアじゃないな、
閉店したんだ」
「そうですかぁ。残念・・・」
「ヘイ君、落ち込まないで、じゃあ代わりに
他の美味しい中華料理店をご馳走するよ」
「うふふふ、今時そんなナンパについて行く人いるんですか~」
なってこったい、君は笑うととってもチャーミング。
どうやら君は僕が求めていた存在らしい。
「そうだなー。例えば君、君は10分後には
僕と美味しい中華料理を食べているよ。」
「もうやだー、そんな訳ないじゃなですかー。」
「誰だって最初はそう思うのさ。
何で見知らぬ男性と会ってすぐに中華料理を食べるのかって。
でもね考えてみなよ。
誰だって最初は見知らぬ男性さ、でも僕らは十分仲良くなる余地がある。
今だって僕らは会話を楽しんでる。
どうだい?もうちょっと仲良くなるようトライする気はあるかい?」
君はちょっと考えるフリをする。
知ってるんだぜ、もう一緒に中華料理を食べる気でいるのを。
僕はそっと手を出して、君の手を繋いで、歩いていくんだ。
僕らは手を繋ぎ、路地裏を抜け出て、
また雑踏の中に入っていく。
「お店は近いんですか?」
「そうだなー、僕らが楽しく会話出来れば凄く近いし、
もし君が僕の事を退屈な男と思えば遠く感じるかもしれない。」
君は僕の方を見つめる。
「あなたって毎回そういう風に連れ出すんですか?」
「恐らくこういうのって相手によるところが大きいんだ。
今君が僕のことを不思議な男性と思うなら、
きっとそれは君によって引き出された僕の個性なんだ。」
「つまり相手が変わればナンパの仕方も変わると?」
「ナンパって言い方はナンセンスだな。
これは出会い、出会う相手によって変わるんだ。
僕は出会いを求めているんだ。
それも強く、心の底から出会いを求めているだ」
「ふ~ん、出会い・・
そうね、これは出会いね。」
「そうだとも出会いだ、それもとびっきり素晴らしい出会いになることを
僕は祈るよ」
「でもそれってあなた次第じゃないの?」
「ノーン、ノーン。僕だけじゃなく、
僕ら次第さ。
あ、もうお店が見えてきた。
どうだいお店までは短く感じたかい?」
「そうね。あっという間だったわ」
君は楽しそうに僕に笑いかけてくる。
続く。
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