湯豆腐は既にコツコツと煮立っており、
私はコンロの火を止める。
鍋敷きを居間のテーブルの上に敷き、
土鍋を持って、居間へ戻ると、少女は鍋敷きを投げて遊んでいる。
「これこれ、ちょっとその鍋敷きをテーブルの上に
置いてくれないか?」
少女はにたーと笑みを浮かべ、
落ちた鍋敷きを拾って、私の方に投げつける。
「これこれ、それは遊ぶものじゃないんだよ。」
私は致し方なく土鍋をテーブルの上に直に置き、
畳の上に落ちた鍋敷きを拾う。
「これはこうするものだからね。」
少女に見せるようにテーブルの上に敷き、
土鍋を乗せる。
「まだ熱いから触っちゃ駄目だよ。
お皿と箸を持ってくるからちょっと待っておいで」
私は居間から出るときに、少し不安になり後ろを振り返ると、
少女は土鍋を触ろうとしている。
すぐさま駆け寄り、
手を取ると少女はきょとんとこちらを見上げてくる。
「一緒にお皿を取りに行こう」
やはり熱い土鍋の側に一人でさせて、
火傷でもしたら心配なのにで、少女の手を取り台所に歩いていく。
「ここはトイレ。こっちはお風呂だ。
そして向こうに台所があるんだよ。」
理解しているとは到底思えないが、
少女は私の言葉に必死に耳を傾けている。
「ここは食べ物や、食べる用意をする所だよ。
でも危ないからここじゃ遊んでは駄目だよ。」
私は棚からお皿と箸を持って、
また少女と手を繋ぎ、居間に戻る。
しかし不思議なもので、
びわから生まれた少女とまだ半日しか過ごしていないが、
既にこの美しい少女をすんなりと受け入れている。
やもめ暮らしが長かったせいのだろうか。
いかに私が寂しい暮らしをしていたんだと気づかされる。
私は食器を持って、テーブルにつくと、
少女も隣に腰を下ろしてくる。
一体今から何が起こるのだろうと、
目を輝かせている。
私は鍋から豆腐をお皿にうつし、
鰹節と醤油を少々かける。
そしてふーふーと息を吹きかけ、
冷ましていると、少女も私も真似て、
ふーふーと豆腐に息を吹きかける。
口をすぼめる少女の表情がなんとも愛おしい。
私はつい少女の頭に手を乗せ、撫ででやると、
顔をほころばせ私の肩に頭を擦りつけてくる。
可愛らしい子猫のような振る舞いに
私は年甲斐もなく胸を躍らせてしまう。
そろそろ豆腐も冷めかなと自分の唇に当てると良い塩梅。
少女の口元に差し出すと、ゆっくり豆腐を口に入れる。
そして何度も何度も咀嚼して、
ごくんと飲み込んだ。
「美味しいかい?」
少女は頷き、もっと食べたいと催促する。
覚ますためにまた豆腐にふーふーと息を吹きかけると、
少女も同じくマネをする。
私はその可愛らしい表情を見たいが為に、
自分が食べることも忘れ、彼女に豆腐を食べさせ続けた。
続く
- 関連記事
-
テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト
官能小説ワード : 官能小説携帯小説かんのうしょうせつえろ小説