「紹介状をお持ちですか?」
「はい」
愛理はバッグから白い封筒を取り出し、
玄関先に現れた和服を着た男性に手渡す。
男性は、封筒から一枚の紙切れを出し、
じっくりと目を通している。
男は視線をあげ、愛理の目を見つめてくる。
「どうぞお入りください。」
「お邪魔します。」と閑静な住宅街にある、
和風の家に入っていく。
中に入ると、奥行のある廊下が目に入ってくる。
「こちらへ」
愛理は男に促されるまま、後についていき、
一室に通される。
茶室といった風情の部屋で、
床の間には、掛け軸とお花が生けられていて、
この部屋だけ時間が止まっているような静かな雰囲気が流れていた。
愛理は座布団の上に正座して座り、
机を挟んで男が座る。
男は背筋をピンと伸ばし、愛理を見つめる。
「ノボルと申します。」
「はじめまして、愛理です。」
「由美さんのご友人という事ですね。」
「はい、色々悩んでいて、それで・・・
由美に一度ノボル先生に見てもらいなよと・・
勧められて、はい・・」
「そうですか。
では早速ですが、愛理さん見させてもらいましょうか?」
「えっと・・お願いしますぅぅ」
ノボルは立ち上がると、愛理の寄ってくる。
愛理のつむじに鼻を持っていきクンクンと嗅ぎ、
そして舐めまわすように体を見つめてくる。
「これは。。臭うなぁー」
「え?く・・臭いですか?」
愛理は恥ずかしくなり、腕を上げ、
自分の脇を嗅いで、臭いかどうか確かめる。
「アッハッハハッハ。
すいません。体臭の事ではありません。
もしかすると愛理さん。
あなたには悪い霊がついているかもしれません。」
「れ・・霊?お化けですか?・・」
「はい。どうやら霊が放つ妖気を感じます。
あなたの中に住み着いているのかもしれません。
何か心当たりはありませんか?」
「えっと・・霊と言われても・・何も・・」
愛理は不安げな表情で考え込む。
「今色々悩んでらっしゃるでしょう。」
「は・・はい」
「その悩みの原因が悪霊のせいかもしれません。
一体どのような事で悩んでらっしゃるのでしょうか」
「えっと・・兄が車で事故を起こしたり、
父がちょっと重い病気になったり。。
そして婚約者が・・事業に失敗して借金かかえちゃって・・
なんか最近不運の連続なんです・・」
ノボルは、目を光らせる。
「やはりそうか。
これはモノノ怪がついてますなー。
全ての原因はあなた、愛理さんです。
あなたに住み着く悪霊が周囲の人を不幸にしているんです。
一刻も早く除霊する必要があります。!!」
「わ・・私のせいで・・皆が不幸になってるんですか?」
「そのとーり!」
「で・・でも・・悪霊に憑かれるとか
私・・信じられません・・・」
「じゃあああああああああああああああ、
あなたは周りの大事な人をもっと不幸にしても良いんですかあああああああ」
ノボルは声を荒げる。
愛理はノボルの迫力に圧倒され、何も言えなくなってしまう。
「失礼!ついつい大きい声を出してしまいました。
私は人が不幸になるのを見逃せない質でして、
このまま愛理さんを帰すとなると、
どんな不幸がさらに降りかかるか心配なんです。
もしかすると、悪霊の存在を信じられないのも、
霊の仕業かもしれません。
愛理さんあなたには上級悪魔がついてるのかも」
「あ・・あくま・・?」
「その通り。どうします?
私も無理強いは出来ません。
でもこうして知り合った方を、不幸になるとわかってて
何もせず帰宅させるのは、物凄く心苦しい。」
ノボルは立ったままうな垂れ、本当に苦しそうに
顔を歪めている。
「じゃぁ・・あの・・除霊・・してくださいぃ」
パっと顔に輝きを戻し、愛理に微笑んでくる。
そして、ノボルは愛理の頭に手を乗せる。
「あなたの勇気と知恵に」と呟くと、
座っていた場所に戻っていく。
「あの・・それで・・お金の方は・・」
ノボルは腕を組み、眉間に皺を寄せる。
「そうでねー。今回は初めてという事で、
除霊が完了した場合に30万の寄付をお願いします。」
「3・・30万・・円?」
「はい、30万円であなたはご家族、そして伴侶を幸せに出来ます。」
「わ・・わかりました・・」
「では、一刻も早い方が良いので、
今から除霊します。」
愛理は何が起こるのかと、不安げな眼差しをおくる。
続く
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