居間に戻り、寂しくソファに座る
全くもって納得いかない
娘といつまでも仲良くいたいのに
それに初潮というオメデタイ日を
祝いたいだけなのに
純粋なる気持ちを踏みにじられた気分なのだ
「敦子!おい!敦子!」
私は、つい怒ったような口調で声を荒げて妻を呼んでしまう
「はいはい、どうしました?」
「彩芽と仲良くなりたいんだ」
「もう、あなた、
そんな子供みたいな事言わないで頂戴よ」
「お前にはわからないよ
娘に嫌われた父親の気持ちなんて・・」
「もうそんなにスネちゃまにならないでよ
彩芽もパパの事、嫌ってませんよ
ただ恥ずかしかっただけですから
ね?機嫌を直して?」
「ホントか?」
「そうですよ」
そうか!単なる勘違いか!
ドンより雨雲気分だった心は
一瞬のうちに晴れ上がり、綺麗な青空で気分はルンルン
私は、すぐさま立ち上がり、
娘の部屋に行こうとすると
妻が呼び止めるのだ
「ちょっとどこへいくんですの?」
「うむ、彩芽の部屋だ」
「ダメですよ。
もうちょっとほっといてあげましょうね?」
「なぜじゃ?」
「なぜじゃ?ってもうパパ
さっきあんな事になったのに」
「でも彩芽は私を嫌ってないって
言ったじゃないか!」
「そうですけど、色々ショックだったんですよ
年頃の娘が入っているトイレを勝手に開けて、
それで、初潮を父親に見られるって
女の子にとってはショックな出来事なんですよ」
「そんなにショックなら
彩芽は私の事、嫌いになってるんじゃないかあああ
さっきと言ってる事違うじゃないかあああああああああ」
つい私の心が荒ぶると
妻は、本当にウンザリするような顔をするのだ
そして。。
「もう~パパったら情けない
本当に情けないわ」
と呟くのだ・・
私が、年頃の時、
母親に言われたあのセリフだ・・・
「パパ、自分だけの気持ちを優先しないで!
彩芽の気持ちもわかってあげてよおおおお!!!」
妻が物凄く怒った顔をしている
「すいません・・・」
私は、謝るしか出来なかった・・
「夕飯まで、部屋でゆっくりしてます・・」
完全にスネちゃまになった私の心
トボトボと2階の階段を登り、
夫婦の寝室の前に立ち止まる
横を向けば、彩芽の部屋がある
しかし、そこは私にとっては
閉ざされた開かずの間
もし勝手に彩芽の部屋に入ったら
妻に怒られるし・・・
それに娘からも本当に嫌われてしまう・・
かもしれない・・・
でも・・・・
実はそんなに怒ってなかったりして?
彩芽も賢い子だし
もう冷静になって私を受け入れてくれるかも?
彩芽は小さい頃からパパっ子だったし
よくよく冷静に考えれば、
私を嫌う理由が1つもないのではないか?
そうだ
その通りだ!
ふん、妻はああ言っていたが、
あいつは昔から物事を判断するのが下手糞だ
あいつの言う事は当てにはならない!
彩芽と、赤飯・・
いや赤飯は古臭いな!
一緒にケーキでも買いに行こうじゃないか!
父親として威厳を取り戻した私は、
彩芽の部屋の方に歩き、
そしてゆっくりとドアを開ける
私の愛する彩芽ちゃ~んはどこかな~
中を覗き込むと、
ベッドの中に入り、布団に被っている
起きているかな~と部屋の中に入ると
布団の中から、彩芽が
「お母さん?」
って言ってくるのだ
ノー!パパだ!
私は、満面の笑みで言うのだ
「彩芽の大好きなお父さんだよー
初潮のお祝いに、ケーキでも
何でも好きなものを買ってあげるよ!」
そう言うと、娘が布団からガバっと起き上がる
さぁ私の胸に飛び込んでおいて!
手を広げまっていると・・・
「いやあああああああああああ
もう最低えええ、出ていってよおおおおお」
そして彩芽の叫び声を聞きつけて
妻が走ってやってくる
「アナタああああああああああああああ
言ったでしょうがあああああ
今は、彩芽を一人にさせてあげてって
いったでしょうがああああああああああ」
「だって・・だって・・
ケーキを・・」
「ケーキじゃありませんんん!
さぁ部屋に行ってなさいいいいいいい」
「はい・・すいません・・・・」
これは、私が悪いのか?
悲しすぎて私は涙を流しながら
寝室に一人でトボトボと向かったのだ
続く
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