「右手に見えますのが、
世界文化遺産に登録された富士山でございますー」
聡子は白い手袋をはめた右手を上げ、
左手にはマイクを持ち、乗客に語りかけていく。
「富士山も綺麗だけど、バスガイドさんも綺麗だねー
ねえちゃん名前何て言うんだっけー?」
「聡子ですー。」
「よ!さとちゃん!!」
町工場の社員旅行で、既に乗客はお酒を飲み始め、
既に出来上がりつつある。
「ちょっとねーちゃんこっちきてよー」
「なんでしょうぅー」
聡子は一番後ろの座席に座る、
ハゲた中年の元へと歩いていく。
揺れるバスの中で倒れないように、
シートに手をかけながら、歩いていると、
お尻をグワシと掴まれる。
「ちょっとやめてください!!」
少し声に力を込めて注意する。
お尻を触った男を見やると、
ニヤニヤした顔つきで聡子を見ている。
「わりーわりー、この俺の右手がさぁー
さとちゃんのお尻を触りたいっつうもんだから、
ついつい右手を甘やかしまったよ。
こら!おれの右手!」
男は左手で右手を叩く。
「もう、そういうのは無しですよ」
聡子は表情を和らげ、奥の座席に行く。
「悪いなぁーうちの若い者がー。
普段は真面目な分だけ、こういう慰安旅行の時は、
ちょっとハメはずしちゃうんだよ。
俺が謝る。すまん」
どうやらこのハゲた中年男性が社長のようで、
見た目とは裏腹に紳士的な対応で、聡子はホッとする。
「いえいえ、私も少し強く言いすぎたようで、
お触りは駄目ですけど、お話は平気なので!
楽しく皆さんいきましょう!!」
「よ!!さとちゃん!!」
社長が叫ぶと、他の社員もさとちゃんと合いの手を入れる。
バスの中は「さとちゃん!」の大合唱が歌われ、
聡子は頬を染める。
「さとちゃんもどうだ一杯!!」
社長が紙コップに入ったビールを差し出してくる。
「一応これでもお仕事中ですのでー、
飲酒は禁止されているんですよぉー」
「そうか。悪い、悪い。じゃあジュース入れるから
皆で乾杯ってのはどうだい?」
聡子はニコリと微笑む。
「それなら大歓迎ですぅ!!」
社長は足元のアイスボックスを開けると、
ペットボトルを取り出し、紙コップに注いでいく。
聡子は紙コップを手にとると、社長が立ち上がる。
「よーし、用意はいいかー!」
「ういーーす!!」と野太い声が響き渡る。
各々紙コップを掲げて、紙コップのアーチが出来上がる。
「かんぱーーーーーーーーい!!」
社長の声とともに皆は聡子の方にコップを差し出し、
そしてグイっとお酒を一気に飲み干す。
聡子もそれに倣い、ジュースを飲み干す。
バスの中では一体感が生まれ、
聡子は今日のお客は当たりかも!っと
楽しくなってくる。
そろそろ峠に入るので、一番前の座席に戻り、
歩きだすと少しふらついてしまう。
あれー、ここってこんなに揺れるのかしら?と思っていると、
どんどん足取りが重くなり、座席についた時には、
瞼が重くなり、視界がぼやけてくる。、
運転手の方をチラっと見ると、
心配そうに自分を見ているのに気づくと同時に、
眠りこんでしまった。
運転手は苦しそうに息をつくと、
小さな声で「すまない」と呟いていた。
バスは峠に入る道とは逆方向に進みだし、
人里離れ、鬱蒼とした道を進んでいく。
座席に座っている男達は、股間を膨らませ、
目的地につくのを今か今かと固唾を飲んで待っている。
それから30分程走ると、ペンション風の小屋が見えてくる。
周囲は木々で覆われ、近くには民家などが一切ない。
小屋の前につくと、バスは止まる。
男達は立ち上がり、聡子の元へと歩いていく。
「おめえら待たねえええか!!!」
社長の声に男達は振り向く。
「権蔵!おめえが聡子を抱きかかえて小屋の中に入れろ」
「ういっす!」
腕を毛で覆われ毛深く、体格の良い権蔵は、
眠っている聡子を抱きかかえ、バスから降りていく。
続く
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